水汲み

はだしの少女は

髪に紅い野薔薇を挿し

夕日の坂を降りて来る。

石だたみの上に

少女の足は白くやわらかい。

夕餉の水を汲みに

彼女は城外の流れまでゆくのだ。

しずかな光のきらめく水をすくって

彼女はしばらく地平線の入日に見入る。

果てしもない緑の海の彼方に

彼女の幸福が消えてゆくように思う。

おおきな赤い大陸の太陽は

今日も五月の美しさを彼女に教えた。

揚柳の小枝に野鳩が鳴いている。

日が落ちても彼女はもう悲しまない。

太陽は明日を約束してわかれたからだ。

少女はしっかりと足を踏んで

夕ぐれに忙しい城内の町へ

美しい水を湛えてかえってゆくのだ。